3週連続で放送された『シリーズ横溝正史短編集Ⅱ』のラストは「犬神家の一族」。
原作はもちろん、映画化、ドラマ化も多い作品なので、わかる人も多いと思うけど、財界の大物・犬神佐兵衛が亡くなり、彼の遺産を巡ってすったもんだしているうちに、犬神家一族内で殺人が起きて、親族が誰も知らなかった複雑な血縁関係などが詳らかにされていくお話。
ちなみに、遺産として受け継がれる犬神家の家宝があるのだけれど、そのものに引っ掛けて殺人が行われるのよね。
犬神家といえば、湖から脚だけニョ! って出た死体が有名だけど、それが有名すぎて、市川崑監督の1976年版の映画と同じく市川崑監督がリメイクした2006年版も見ているはずなのに、その死体がある家宝に引っ掛かって殺されていることに、このドラマを見て初めて気づいたよ……私。
映画2本も見ていたくせに、まさか30分くらいに短縮したドラマでようやく理解するとは。お恥ずかしい限り。
いやでも案外、このドラマを見てから、映画なりに触れたほうが、『犬神家の一族』の家系や殺人トリックがわかりやすいのかも……とも思ったり。
で、このドラマ『シリーズ横溝正史短編集』の肝と言えば、原作に忠実に再現しつつ、オリジナリティあふれる演出をするところ。
今回も結構斬新でした。
いくつか場面が切り替わるところはあったけれど、ほとんど犬神家一同がいる、客間らしき座敷のシーンばかり。
しかも、一族の誰かが殺されてもそこに死体のままいるという。
そして、彼らが登場するところには、「犬神家の一族」というテロップが毎回入る。
最初、タイトルを何回も出しているのかと思ったけど、
「そうじゃない!『犬神家の一族』と説明しているテロップなのだ!」
と、見終わったあとに気づいた。
こんな風に映像で遊ぶ感じがたまらなくおもしろい!
映像で遊ぶと言えば、金田一耕助のフケ。
この話では冒頭からずっと金田一は帽子をかぶっていたのだけれど、犯人は誰だか種明かしをするクライマックスシーンで突然帽子を外して、フケを豪快に払っていよいよ物語の核心へと迫る。
そのあと、犯人が誰だかわかったあたりから、フケが雪のように画面いっぱい舞っている演出も、犯人の計画がすべてパーになったことを強調しているようで、愉快だった。
あとは、洋服やインテリア。クラシカルな服をまとっているのに、インテリアがサイケデリックな雰囲気で、そのギャップがかえって犬神家の親族の不穏な関係を象徴しているようで、痛快でした。
『シリーズ横溝正史短編集Ⅱ』の最終話も満足度が高かった!
『―Ⅲ』があることをどうしても期待してしまうのだけど……。ぜひまた近々、新作を放送してほしいものだわ。